古典の日絵巻Picture scroll
「古典の日」からとっておきの情報や
こぼれ話などをお届けします。
古典の日絵巻 第十一巻:古典芸能干支絵巻
〜舞台で活躍する動物たち〜
犬猫もののテレビ番組に目を細めながら、劇場では化け猫や獅子の舞に心奪われる私。
鳥獣戯画絵巻から着想して、古典芸能で活躍する動物たち、毎月なので干支12種にちなんで連載します。鼠の妖術、菅公の牛、名画から抜けた虎、兎の飛団子、龍神の滝登り、お岩様は巳年の女、天馬の宙乗り、屠所の羊、靭猿、東天紅、八犬伝、五段目の猪と 能狂言 歌舞伎、文楽などからご案内いたします。
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その12 未 ひつじ 羊
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その11 午 うま 馬
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その10 兎 うさぎ 卯
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その9 亥 イノシシ 猪
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その8 酉 とり 鳥
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その7 戌 いぬ 犬
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その6 巳 み 蛇
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その5 子 鼠 ねずみ
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その4 辰 龍 たつ
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その3 丑 牛
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その2 猿 申 サル
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その1 虎 寅 とら
その5
子 鼠 ねずみ
夏は芝居や落語、講談では怪談物が好まれる。代表作は「四谷怪談」。
講談は見台に照明を仕込んで演者の顔を不気味に照らしたり、落語は客席に白い着物の幽霊役を出して「キャーッ」といわせたり、あの手この手で楽しませる。歌舞伎は8月京都南座で坂東玉三郎のお岩様。9月は大阪文楽劇場で劇団前進座の通し上演と「四谷怪談」一色。この話には鼠が多く出てくる。赤子を咥えて消える大ネズミや。夫の伊右衛門が再就職のために必要な書類がネズミに食い荒らされボロボロに。これはお岩様が子年生まれだからだ。♫そうよ、ワタシは子年のおんな・・・という具合。
文楽や歌舞伎の「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」は伊達家(仙台)のお家騒動だが悪人のひとりは仁木(にっき)弾正。忠義な女主人公、乳人(めのと)政岡のふところから連判状を奪うのが鼠で床下に逃げ込む。そこで警護をしていた男之助が捕え、鉄扇で頭を打つが花道に逃げ、姿を消す。暗闇の中、花道の切穴(すっぽん)から煙が出て口に巻物を咥えた長裃姿の武士が登場。これが仁木。鼠の妖術使い手でもあった。着ている着物も鼠色だ。額には先ほど受けた傷が赤い。不気味に笑いながら花道を入ってゆく。
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上方の音曲・地歌には「作物(さくもの)・おどけもの」といって滑稽な内容を扱ったものもある。一連の鼠シリーズがそれ「荒れ鼠」「曲鼠」「鼠の道行」などがある。「荒れ鼠」は商家の台所でいたずらをする鼠たちが様々な名前で登場。しかし、飼い猫に見つかり命を落とす哀れな一匹・・という内容だが、続編に復讐話の「鼠の仇討」まで登場。上方舞でも演じられるが「鼠の道行」は艶物系統にも近く、ほかの「鼠もの」は扇子で尻尾をうまく表現し楽しい。
「子子子子子子子」いたずらではない。「ねこのこ こねこ」「ねこ ねこ こねこ」「こねこ ねこねこ」といろいろ読める、この曲名の浄瑠璃が元禄時代に作られた。鼠の天敵、猫が音に同居する、トムとジェリー状態。日本語はおもしろい。
ちょっと残酷な鼠を紹介する。狂言「釣狐」僧侶に化けた狐をとらえる罠。それは油で揚げた鼠。狐をおびき寄せるアイテムだ。近くまで寄っては舌なめずりをする。だが賢い狐は罠だと知っている。うまそうな匂い。食べたい、ダメだの繰り返し。人間の煩悩とよく似ている。結局、理性のタガが外れてしまうのは、鼠のおいしさを知っているから・・・哀れな結末が待っている。生きていれば鼠が教えてくれた「チュー チュチュー 注意‼」としかし狐は罠にかかって、こう鳴く「コンカーイ」狂言の別名は「吼噦(コンカイ)」だ。