「四季草花草虫図屏風」(蝶・蜻蛉)鈴木其一「春秋草木図屏風」

俵屋宗達「双犬図」※作品画像はすべて部分、細見美術館蔵

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「古典の日」からとっておきの情報や
こぼれ話などをお届けします。

古典の日絵巻 第十巻:京の美を担う次世代の作家たち

古典の日絵巻「第十巻:京の美を担う次世代の作家たち」をお届けいたします。 今年度は12回に亘り、それぞれのジャンルで活躍される作家の皆さんから、ものづくりやお仕事にかける想いを綴っていただきます。伝統と先端の間に立って挑戦し、誕生するものとは一体どのようなものでしょうか。作家の皆さんの手によって誕生するまでの知っているようで、知られなかった世界をお話いただきます。

第10回

羽田 登喜(はた とき) 染色工芸作家

1968年 羽田 登の次女として京都に生まれる
1987年 京都市立銅駝美術工芸高等学校 日本画科 卒業
1992年 京都市立芸術大学 美術学部 工芸科 染織 卒業
1994年 京都市立芸術大学大学院 美術研究科工芸専攻染織 修了
1996年 フランス リヨン染織美術館にて「羽田家のきもの展」
2002年 ファッションカンタータfromKYOTO に出品 以降多数回出品
2005年 京都工芸美術作家協会会員
2015年 琳派400年記念「京に生きる琳派の美」
2020年 京都工芸美術作家協会理事
2021年 京都工芸美術作家協会75周年展
    京都工芸美術作家協会展in伊賀 煌
    京都工芸美術作家協会@東京〜京都が、KOGEIする〜

 私は現在、鷹峯の地で手描き友禅で主にきものを制作しています。祖父が金沢で加賀友禅を学び、その後憧れの京都で京友禅を修行し、そのまま京都で独立して手描き京友禅の工房を構えました。京都は一枚のきものを分業で作り上げますが、祖父は加賀友禅の特徴である一貫作業でやって行こうと決めました。スケッチをして、図案を考えて、草稿を描き、下絵、糊置き、友禅、伏せ、地染めなど、全ての工程を自分で。分業でなされているそれぞれの工程の腕の良い職人さんがたくさんおられる京都で、切磋琢磨し、努力を重ねた祖父の思いを受け継いで、父、そして私も一貫作業で制作をしています。

絵皿に染料を混ぜ合わせて思い通りの色を作ります。一つの色を薄い色から濃い色まで3〜5色作り、ぼかしたり、奥行きを出す為に使い分けたりします。

友禅を挿すときに使う筆です。思い通りに作った色が濁らないように、色の系統を決めて使います。

地色を引き染めする為の刷毛です。これも筆と同じく、思い通りに作った地色が濁ってしまわないように、色の系統を決めて使います。どの道具も大切に使っています。

 手描き友禅は、元禄時代に宮崎友禅斎という大人気の扇面絵師の絵を何とかきものの紋様に出来ないかと考えて生み出された技法です。糸目糊で輪郭を縁取り、隣り合う色同士が混ざり合わないように防波堤の役割をすることで、多彩な色使いで絵画のように自由な表現が出来る様になりました。今でもほとんど変わらない作業工程ですから、300年も前にとても優れた技法が考えられたのです。世界を見ても、手描きでこれほど緻密で精度の高い染色技法は他にありません。

 祖父や父から制作において常に、おもしろいことをしなさいと言われてきました。ですので、いつも、なにかおもしろいことを、なにか新しいことを表現したいと思っています。そして、きものはファッションなので流行がありますが、時代を越えても古びない、確かなものづくりを目指しています。


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「私のこの一作」

瞬きするたびに

2021年の1月に京都文化博物館で開催された「京都工芸美術作家協会75周年記念展」に出品した訪問着です。京都工芸美術作家協会は京都で活躍する工芸作家の団体で、日展や日本工芸会など会派の垣根を越えた稀有な協会です。いつも出品のための制作には気合いが入ります。アイデアを捻り出すのに、色から入る時と、モチーフから入る時があります。この作品は地色にブルーとグレー、そして白でぼかし合わせたい、というところからイメージを膨らませました。上前、背筋、下前に縦に文様を配したかったので、薔薇をスケッチし、私なりの形にデフォルメしました。まばたきをすると目が慣れるまでの一瞬に、見ているものが少し違って見える様子を表現方法を変えることでイメージ出来ないかと思い、描き染めました。また、花の一生を描いたのかと言っていただいたりもしたので、ご覧になる方に色々イメージしていただけて、嬉しい作品になりました。