「四季草花草虫図屏風」(蝶・蜻蛉)鈴木其一「春秋草木図屏風」

俵屋宗達「双犬図」※作品画像はすべて部分、細見美術館蔵

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古典の日絵巻[第七巻:きものがたり]

市田 ひろみ

服飾評論家

服飾評論家、他、幅広くご活躍されている市田ひろみさんが、和の生活文化の古典ともいえる“きもの”の魅力について語る「きものがたり」。先生直筆の原稿から先生の語りが聞こえてきそうです。どうぞお楽しみください。

古典の日絵巻第七巻 きものがたり

琳派四○○年を記念した石碑を京都市に寄贈した市田ひろみさん(2018年6月8日 京都市)

第六号 平成30年9月1日

光悦村
服飾評論家 市田 ひろみ

六月八日 洛北鷹峯に 新しい ランドマークが出来た。琳派四〇〇年の 記念碑だ。
琳派の美の様式に関しては、芸術家はともかく、きものファンにも 正倉院もようとともに 愛されて来た文様だ。
風神雷神・秋草文様・平安絵巻など おそらく一枚は 持っている だろう。
その時代の流行にまどわされることなく 年令や趣味をこえて、琳派のきものは 日本人の衣生活の中に 生きつづけている。
元和元年(一六一五年)本阿弥光悦は 徳川家康(一五五八年-一六三七年)から鷹峯に土地を拝領した。
大芸術家、本阿弥光悦のまわりには 光悦の一門をはじめ あらゆる 技術の職人達が集まって来て 数々の作品を 生み出してゆく。
染・織・糸・陶器・竹・塗 など
光悦村集団は やがて 独特の集落を形成してゆくようになる。琳派・光悦村・芸術の地から数々の名品が生まれた。
尾形光琳・乾山、酒井抱一、中村芳中、加山又造など 四百年を越えて その美の命脈は 生きつづけている。
それぞれの作家の個性を 追及するのではなく 自然の中の美を自由に 追及するといものだ。
四百年の美意識は、今尚 表現者達の中に生きている。
私も仕事を はじめて七十年になり、ささやかながら 衣裳を通して 日本の文化にふれて来た
光悦寺をはじめ 鷹峯を 訪れることは度々あったが、
鷹峯の道標は どこに という思いを長い間描いていた。
私の思いは 琳派四〇〇年という 大きな ふしめに 現実となった。
鷹峯小学校の前。
まさに光悦村のどまん中だ。
光悦寺や 源光院にも近い
河野元昭(こうのもとあき)氏の 碑文に こう 書いてある。 「此後(こののち)とても昔の名作におとらぬ名人いくらも出申(いでもう)すべし」 (出典:本阿弥行状記)
碑文に揮毫して下さった 吉川蕉仙(よしかわしょうせん)氏の書も素晴しい。
里山の緑が美しい村だ。

※「琳派400年記念碑」は、市田ひろみさんの寄附を活用し、京都市が建立しました。
※河野元昭氏…静嘉堂文庫美術館館長、元 琳派400年記念祭委員会呼びかけ人
※吉川蕉仙氏…日本書芸院名誉顧問