「四季草花草虫図屏風」(蝶・蜻蛉)鈴木其一「春秋草木図屏風」

俵屋宗達「双犬図」※作品画像はすべて部分、細見美術館蔵

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古典の日絵巻[第七巻:きものがたり]

市田 ひろみ

服飾評論家

服飾評論家、他、幅広くご活躍されている市田ひろみさんが、和の生活文化の古典ともいえる“きもの”の魅力について語る「きものがたり」。先生直筆の原稿から先生の語りが聞こえてきそうです。どうぞお楽しみください。

古典の日絵巻第七巻 きものがたり

桂歌丸(落語家)

第八号 平成30年11月1日

話芸
服飾評論家 市田 ひろみ

この七月に 落語家 桂歌丸氏が亡くなった。
何といったって 私は「笑点」の大ファンで 毎週 たのしみに拝見している。
とりわけ 歌丸氏の たくみな 話術は 最後の

(
おち
)

まで お客さんを 引っぱってゆく力がある。特に 間のとり方が見事だ。
最近の万才は裸になったり なぐったり 変顔 から わい談まで、私の好きな 話芸とは 違う路線で 若者の 心をつかみ 笑いをさそっている。
平成五年 私は お茶のコマーシャルを依頼され 桂米朝師匠の テープを 渡された。
「間を よく 聞いて下さいね」
その時渡されたのは 「京のぶぶ漬け」だった。何度も聞いた。
たしかに 間が生きている。
東の歌丸 西の米朝 とその 話芸は 定評があった。
特に 歌丸氏は 古典の 研究を追求し 古い 名作の 研究をつづけられた。
古典をライフワークとする 歌丸氏の話芸は 日本語の特性が生きている。
言葉と 言葉の間の 音の無い時間が 見事に 生きているのだ。
書道も そうだ 白い紙の上に 黒い文字。白も黒も 共生して 美の世界を作る。
私の仕事の中に 講演もあり 人の講演を聞くこともあるが やはり 話芸の たくみな人の講演は 時のたつのが早い。
文章を書く時も 起承転結 が必要だ。
始まりがあって 話がふくらんで 転結があって しめがあって 終息。
たとえ 四〇〇字の 原稿であっても 一〇〇字の 原稿であっても 起承転結は同じだ。
文章に 起伏があり 全体がまとまる。
だから結婚式のスピーチでも 会合の挨拶でも 大体 起承転結で 原稿を作っておくと良い。
音量が大きすぎたり 内容があちこち迷走したりしたのでは せっかく良い 内容であっても胸を打つことはない。
歌丸さんの場合、よく 死亡というネタで笑いをとっていたが 素人は そんな高級な話芸は むつかしい。
やさしく、美しい 日本語は 古典の中に歌丸さんの 努力で 後世に残ることになった。同時に又 日本各地の方言も 時代の遺産として残るだろう。 歌丸さんの話芸は 大きな遺産をのこしてくれた。