「四季草花草虫図屏風」(蝶・蜻蛉)鈴木其一「春秋草木図屏風」

俵屋宗達「双犬図」※作品画像はすべて部分、細見美術館蔵

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古典の日絵巻[第七巻:きものがたり]

市田 ひろみ

服飾評論家

服飾評論家、他、幅広くご活躍されている市田ひろみさんが、和の生活文化の古典ともいえる“きもの”の魅力について語る「きものがたり」。先生直筆の原稿から先生の語りが聞こえてきそうです。どうぞお楽しみください。

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古典の日絵巻[第七巻:きものがたり]

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古典の日絵巻第七巻 きものがたり

パルミラの遺跡

第十二号 平成31年3月1日

砂漠に土石流
服飾評論家 市田 ひろみ

この信じられない現象が ヨルダンの ペトラでおこった。
私が シリア・ヨルダンを訪れたのは一九九三年。いつも アフリカへ行くのは 年末年始だ。砂漠に 雪の降る風景は ことさら胸を打つ。ベドウィンのテントも 白い雪にかくれている。
岩山に築かれた 古代都市に 穴居で 二二〇〇年の歴史を かぞえていた。
このあたり 見るべき 遺跡が多い。
ペトラの 岩山群は 映画「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」のロケ地として有名だ。一九八五年 世界遺産に指定されて ベドウィン の多くの人々は 都市に移住させられた。
ほんの数軒が 昔ながらの くらしをつづけている。
政府は 砂漠の緑地化に 力を入れている。砂漠にくらす ベドウィンの財産である羊が 砂漠の 数少ない 草を 食べる時 根っこから抜くので 砂漠の緑地化に逆行する。
しかし ベドウィンの 砂漠から 都市の周辺に 移動することで ベドウィンのくらしは多くのものを失いつつ 変化した。
でも あの 石の住いが つづく ペトラに土石流が 激しい勢いで 濁流が はしるのをみると 二〇〇〇年前 ここに 暮らした ナバティア人達は 濁流に おそわれる かつての都を どんな思いで見ただろうか。
北のパルミラ(シリア)の遺跡も イスラムの兵士達によって 被害を受けた。
なつめやしに かこまれた パルミラの 大遺跡群は イスラム国の 襲撃によって 又 自然災害によって 少しづつ 人類の築きあげた 美しい姿を変えて ゆく。
砂漠の中のパルミラの遺跡は かつての 商業都市の遺跡。
かつて私の見た 遺跡の中で 最も美しい遺跡だ。 石門あり 商店あり 劇場あり。
かつて 中東で 最も にぎわっていた商都であろう。
そしてこの都に クレオパトラの再来といわれる ゼノビアという 女王がいた。
私は ここで らくだの おじさんから 古銭をもらった。
美術館で しらべてもらったら ほぼ ゼノビアに真違いないと言ってもらった。この都をどんなふうに この 古銭は 生きたのだろうか。
ペトラやパルミラの「今」 に 心をよせながら 終えたいと思う。