「四季草花草虫図屏風」(蝶・蜻蛉)鈴木其一「春秋草木図屏風」

俵屋宗達「双犬図」※作品画像はすべて部分、細見美術館蔵

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「古典の日」からとっておきの情報や
こぼれ話などをお届けします。

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古典の日絵巻 第十巻:京の美を担う次世代の作家たち

古典の日絵巻「第十巻:京の美を担う次世代の作家たち」をお届けいたします。
今年度は12回に亘り、それぞれのジャンルで活躍される作家の皆さんから、ものづくりやお仕事にかける想いを綴っていただきます。伝統と先端の間に立って挑戦し、誕生するものとは一体どのようなものでしょうか。作家の皆さんの手によって誕生するまでの知っているようで、知られなかった世界をお話いただきます。

第12回

江里 朋子(えり ともこ) 截金作家

仏師 江里康慧と重要無形文化財「截金」保持者江里佐代子の長女として京都で生まれる。
京都芸術短期大学(現:京都芸術大学)日本画専攻卒業後、母に截金を習い始める。先人達が大切に伝えてきた截金の技術を受け継ぎながら、新たな截金の世界に挑戦する。2011年 第58回日本伝統工芸展で截金飾筥「皓華」が日本工芸会新人賞受賞。2019年 第54回 西部伝統工芸展で截金飾筥「憧憬」が朝日新聞社大賞。2020年京都府文化賞奨励賞受賞、他、数々の賞を受賞。現在は、夫の郷里の福岡へ移り京都と福岡で制作活動を行う。

 截金(きりかね)の起源を遡れば遥か紀元前にまで至る歴史のある技法です。日本では仏像、仏画の加飾・荘厳(しょうごん)に用いられ発展してきました。

 一枚では光を通すほど薄い金箔やプラチナ箔を数枚焼き合わせて厚みを持たせたものを、鹿皮を張った盤の上で、竹で作った刀を使って截(き)りそろえ、両手に持った二本の筆を操って貼りながら文様を描いていきます。

截金の道具

箔を截る
 金は古来より大変貴重なものであり、また山吹色に輝く色そのものが美しく、酸やアルカリに侵されない永遠性も相まって高貴な人の身の回りや神仏を飾るために珍重されてきました。仏像、仏画にも多く金が用いられてきましたが、それは仏の教えの尊さを「光」として表現されてきたのだと思います。中でも截金は、その表現として人々が叡智を集め高められてきた技法であると思っています。
 私も日々截金に携わる中で、先人たちの思いを大切にしながら制作してます。

 父の彫る仏像へのお荘厳に携わりながら、自分の作品制作に向かう中、伝統として受け継がれてきた技法の根幹の思いは大切にしながら、その中で自分の生きる「いま」という時代の截金を表現したいと思っています。仏像、仏画に施された古典の截金の文様にも、専門の方がご覧になればすぐにわかる時代時代の違いがあり、絶えず変化を続けながら今に伝わってきています。それは、截金の可能性を拡げてきた。ということにも通じ、いまの表現をまた次代に繋いでいくことも携わる者の役割であると思っています。

 可能性を拡げるという課題の中、今取り組んでいることの一つに、截金透塗(きりかねすかしぬり)があります。截金は膠(にかわ)やふのりで金を接着しているだけですので摩擦や水分には弱く、擦れたり剝がれてしまう恐れがあります。その対処策として漆でコーティングすることを亡母江里佐代子が考案し、漆作家の方と共に開発に取り組みました。失敗を重ねながら出来上がった作品は、つややかな漆の被膜の下から赤みを帯びた截金の線が柔らかく浮かび上がっています。最も透明に近い漆を使ってもどうしても漆の色が乗って、金色が赤っぽく見えるのですが、漆は経年変化によって次第に透明に透けてきて金本来の色が現れて参ります。

截りそろえた箔

截金作業

截金飾筥 憧憬

 最初はコーティングという目的のための漆でしたが思いがけない美しさ、そして年月を経ていく楽しみ、それは手元にあって共に育っていくような感覚、悦びに出逢うひと時です。私もこの截金透塗の技法を受け継ぎ、硯箱や茶箱など展開を進めています。今までになかった異素材との出逢いも含め截金の可能性を拡げ、いまの、そして自分の表現を追い求めていきたいと思っています。


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「私のこの一作」

截金透塗喰籠  一華

截金を施した上から梨地漆を塗り、蠟色仕上げをした作品です。漆作家の立石彰氏の協力を得て出来上がった截金透塗は時を経て截金の美しさがより浮かび上がってくる新しい截金の表現といえます。