古典の日絵巻Picture scroll
「古典の日」からとっておきの情報や
こぼれ話などをお届けします。
古典の日絵巻 第十巻:京の美を担う次世代の作家たち
古典の日絵巻「第十巻:京の美を担う次世代の作家たち」をお届けいたします。
今年度は12回に亘り、それぞれのジャンルで活躍される作家の皆さんから、ものづくりやお仕事にかける想いを綴っていただきます。伝統と先端の間に立って挑戦し、誕生するものとは一体どのようなものでしょうか。作家の皆さんの手によって誕生するまでの知っているようで、知られなかった世界をお話いただきます。
-
3月 江里 朋子 截金作家
-
2月 平井 恭子 木版画摺師
-
1月 羽田 登喜 染色工芸家
-
12月 種田 真紀 絵付師
-
11月 山本 茜 截金ガラス作家
-
10月 八木 隆裕 茶筒職人
-
9月 青山洋子 和菓子職人
-
8月 杉本晃則 塗師・島本恵未 蒔絵師
-
7月 小倉智恵美 竹工芸作家
-
6月 伊東庄五郎 御所人形師
-
5月 諏訪蘇山 陶芸家
-
4月 吉岡更紗 染色家
第6回
青山 洋子(あおやま ひろこ) 和菓子店青洋店主
有職菓子御調進所老松(ゆうそくがしごちょうしんじょおいまつ)で10年間修行をし、和菓子の美しさ、面白さ、美味しさ、可能性を多くの方に知っていただきたいと思い、2012年3月に工房を構える。伝統の技法を生かし、匂いを残しつつ、現代の生活スタイルに合う和菓子を提案している。
その空間でしか存在しない特別な和菓子。私が修行をしていた老松の社長の言葉だ。私はこの言葉が大好きで、そんな和菓子を創りたくて和菓子店青洋を立ち上げ、もうすぐ10年になる。 お茶会のお菓子でも、個人のお祝いのお菓子でも必ずテーマや希望、味や色の好み等を依頼主とコミュニケーションを取りながら一つの形にしていく。私がお菓子を創る上で大切にしている部分の一つだ。最終的な形は私が創り上げるが、その形の中には依頼主の想いも反映され、それによってより大切な、記憶に残るお菓子となる事が多い。
菓銘「夏姿(なつすがた)」
初夏につくったお菓子。果物や野菜が実る前の花々が咲く様子をきんとんに表しています。
干菓子
風や水、光、花が咲くといった自然物を抽象的に形にしました。
そんなお菓子を様々なシチュエーションに基づいて創りあげられる様、技術や思考、デザイン等の幅を広げる為に、工房にて月に4日間だけの和菓子販売を行い、そこで様々な実験を兼ねてのお菓子を提案している。季節の景色、日常の風景、時事問題、文化など、テーマを自由に定め、素材や形、味の組み合わせを考え、お菓子にしている。
私はアイデアノートを日々持ち歩いているのだが、そこに印象に残った風景や、言葉、文章、絵などを書き留めておき、そこからお菓子にする事が多い。自然の景色、植物はもちろん、芸術、文学、工芸、ファッション、時事問題、人などお菓子のヒントになる分野は様々だ。先にお菓子の銘が思い浮かぶ時もある。毎月の和菓子販売は季節感や旬も大切にしているので、その季節に美味しい果物や野菜があればそれらを使用したお菓子を作る事もある。一度作った形は二度と販売日には作らないというとてもストイックな条件を自身に課して。
毎月新しいものを生み出すというのはとても大変ではあるが、和菓子の可能性の追求となり、挑む姿勢が自身の経験や自信に繋がる。今はまだ様々な事に挑戦をする時期だと考えている。ただ、とてつもなく斬新な事をやる訳ではなく、古から受け継がれている部分を大切にし、王道から半歩ずれるくらいの感覚を持ちながら、現代の生活にも合ったお菓子作りを心掛けて行きたいと思う。
この様な想いを持ちながら日々、和菓子と向き合っているが、ただ、作るというだけではなく、和菓子教室を開催したり、大学等の講義で和菓子の話をしたり、和菓子の展覧会を開催したりしながらこの素晴らしい和菓子の魅力を沢山の人々に伝えるという事も大切にしている。近い将来、海外でもこういった取り組みができたらという目標も携えている。
一般的にイメージされる和菓子屋とは違う部分も多いが、今後も和菓子にまつわる色々な事に関わり、唯一無二の存在であり続けたいと思う。
菓銘「影彩(かげいろ)」
これも初夏の頃のお菓子で、その頃は光がとても美しいのですが、影にも美しい彩があるのではないかと思い作ったものです。
大切な道具
工房立ち上げ当初より使用している道具です。特殊な道具は手掛ける職人さんが年々少なくなっているそうなので、大切に扱っています。
道具「きんとん通し」
きんとんを作る際の道具です。