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古典の日フォーラム2021
「古典の日フォーラム2021」を開催いたしました
日時:令和3年11月1日(月)午後1時~4時
場所:京都劇場
老若男女問わず最も親しい日本の古典文学といえば『源氏物語』と『平家の物語』がトップに挙げられることでしょう。
特に平家物語の基調音である「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。…」の無常観は、日本人の感性に深く響くものがあり、鎌倉初期の成立以来、様々な表現の分野で多く取り上げられ、能の世界では平家物語から想を得た作品が80曲に上ります。
2021年の「古典の日フォーラム」は、平氏一門の栄華を築いた平清盛が没して840年、日本の国民文学の代表作の一つであり、語り文化の代表作ともいえる平家物語の諸行無常・盛者必衰の劇的な世界をお楽しみいただきました。
今年も「古典の日」を愛してくださるお一人でも多くの皆さまにご覧いただきたく、オンライン配信でフォーラムの様子をお届けしています。
安田登先生のコーナーでは、先生の音頭で会場の皆さんと声を落として(本当は大きな声を出したいところなのですが、コロナ禍でもありますので…)朗読を楽しみましたが、お家ではどれだけ大きな声を張り上げていただいても結構です!配信を見ながら一緒にお楽しみいただけましたら幸いです。
※当日の動画はこちらから(youtubeへ移ります)
◇画楽交響
ロッシーニ弦楽ソナタ第2番イ長調
演奏 船岡陽子ヴィルトゥオージデルカント
美しい弦楽合奏の音色をお楽しみいただきました。
左より
辻井淳(第一ヴァイオリン・京都市交響楽団元コンサートマスター)
森園康一(コントラバス)宇田川元子(チェロ)森園ゆり(ヴァイオリン)
題字「生々流転」 川瀬みゆき(書道家)
◇「古典の日宣言」
橋本夏果(第12回古典の日朗読コンテスト【中学・高校生部門】大賞受賞者
◇登壇者のご紹介
右サイド中央より
【来賓】
文化庁長官 都倉俊一(古典の日推進委員会特別顧問)
文化庁次長 塩見みづ枝
京都府議会議長 菅谷寛志
京都市会議長 田中明秀
宇治市議会議長 堀明人
左サイド中央より
【主催者】
古典の日推進委員会会長 村田純一
副会長 西脇隆俊(京都府知事)
門川大作(京都市長)
松村淳子(宇治市長)
塚本能交(京都商工会議所会頭)
◇主催者挨拶
古典の日推進委員会会長 村田純一
「古典の日」は2022年、大きな節目の年を迎えます。一つは、文化庁の京都移転を契機に、より一層の協力体制を築き「古典の日」の全国展開に努めること。二つ目は、「古典の日に関する法律」が施行されて10周年。法律には、「国民が古典に親しむことを促し、その心のよりどころとして古典をひろく根づかせること」等が定められています。古典の日推進委員会は、法律の趣旨を推し進めるため、古典の様々な分野で、研究・普及・啓発活動に貢献される方を顕彰する「古典の日文化基金賞」を新設し、去る9月3日に第1回の授賞式を執り行いました。これらの活動を通じて、京都から「古典の日」の全国展開にますます力を注ぐことを決意したことを挨拶とさせていただきました。
◇来賓祝辞
文化庁長官 都倉俊一
2021年4月に文化庁長官に御就任された都倉俊一様から励ましのおことばをいただきました。
コロナ禍による文化芸術への影響は深刻であるが、こうした窮状の中で新しい取り組みが生まれてきている。文化芸術を花に例え、肥料だけでは枯れてしまう花には水と太陽が必要で、同様に文化芸術には救済の手を差し伸べるだけでなく表現の場が必要であること。いずれこのパンデミックを克服した暁には、いままで溜まっていたエネルギーが噴出して、文化芸術活動が勢いを増して花開くことを期待している。
23年の春、文化庁が京都に移転する意義は、千年にわたり日本文化の中心であった古都京都、そして関西の地から日本の文化芸術を発信していくこと。そのために地域の連携を密にする必要性を結びのことばとしていただきました。
◇講演「西行・長明・定家の見た源平の争乱」
浅見和彦(成蹊大学名誉教授)
西行・長明・定家は、偶然か源平の争乱を目の前で体験してきた人達です。未曾有の乱に対して、それぞれの立場で目や耳をふさぐことなく、経験したこともない事態を正面から見据え、自分達の考えを育てきました。その考えは、3人が生きてきた当時に劣らぬ激変の時代を今に生きる私達にどう生きていけばよいのかの教科書になっています。
さらに興味深いのは、私達が知らなかった平家物語に登場する人物の人柄についてのお話です。是非、配信で先生のお話をじっくりとお聴きください。もう一度、平家物語を紐解かれることうけあいです。
◇転換期に読む『平家物語』~能楽と語りとともに~
Ⅰ 解説と朗読
安田登(能楽師)×塩高和之(琵琶奏者)
平安時代から鎌倉時代へ価値観が変わった時代に生まれた『平家物語』。まさにパンデミックが襲い掛かる変化の時代、転換期の今の私達に平家物語は何を語りかけてくれるのでしょうか?安田先生のお話を聞いてご自身で問いかけてみてください。
お話の合間に、安田先生の音頭と塩高さんの薩摩琵琶をバックに(なんと贅沢なことでしょう!)会場の皆さんと朗読をいたしました。平家物語は、目で読むのではなく、琵琶法師が琵琶を弾きながら語って聴かせた、耳で聴く物語です。声に出して詠む(謡う)ことは、まるで自分が物語で活躍する人物になるかのような、新しい発見がありました。皆さんもご友人と拍子を取りながら、声にだして謡ってみてはいかがでしょう。
そして、このコーナーの後半はお能「忠度」の上演です。お能の演目の多くは、この世に想いを残して亡くなった人達が、その残念な想いを聞いてほしくて書かれたものです。残念な想いをつらつらと語られるのですから、観ていると眠くなるという方が多いのではないでしょうか。その時は寝てもいい、と安田先生はおっしゃいます。これは普段思い出さないような過去の記憶、自分の切り捨てた魂が、お能に登場する人物と重なって、生きている私達の魂も鎮めるものだという考えです。でも、今日は寝ている暇はありません。忠度の無念さを是非、聞き留めてあげてください。
◇転換期に読む『平家物語』~能楽と語りとともに~
Ⅱ 半能「忠度」
シテ(忠度) 金剛龍謹(能楽金剛流若宗家)
笛 左鴻泰弘
小鼓 曽和鼓堂
大鼓 河村大
後見 豊嶋幸洋
地謡 種田道一
宇髙竜成
山田伊純
惣明貞助
【解説】藤原俊成の御内の者が出家して、摂津国須磨浦まで来ると、薪に花を折り添えて背負った老人が桜の木蔭に花を手向けて帰ろうとするのを呼びとめ、老人に一夜の宿を乞う。老人は、この花の蔭にまさる宿はないだろうと言い、この桜は平忠度の跡の標に植えられたものと教える。
僧が花の蔭に旅寝すると、夢中に忠度の亡霊が出現し、「行き暮れて」の歌を読人不知とされたことが妄執の中の第一と嘆じ、俊成の子の定家に作者名を付けてくれるよう話してくれと頼む。そして都を落ち、須磨の海岸で岡部六弥太と戦い、ついに六弥太に首を打たれて果てる経過と、六弥太が箙に付けられた短冊の歌を見て、忠度であることを知る條りを物語った後、跡を弔われんことを願う。