「四季草花草虫図屏風」(蝶・蜻蛉)鈴木其一「春秋草木図屏風」

俵屋宗達「双犬図」※作品画像はすべて部分、細見美術館蔵

フォーラムForum

古典の日フォーラム2019

 

「古典の日10周年記念フォーラム2019」を開催いたしました

令和元年、古典の日推進委員会は皆様の厚い支援のおかげで発足10周年を迎えることができました。この間、「古典の日に関する法律」の制定、「琳派400年記念祭」の実施、「京都創造者大賞2019」の受賞など、その存在感を高めてきました。
今回は、古典の原点「語り」にスポットを当て、筑前琵琶、能、浪曲、落語といったさまざまなジャンルの古典芸能を紹介いたしました。

日時:令和元年11月1日(金) 午後1時~4時25分
場所:京都コンサートホール 大ホール

◇パイプオルガン演奏
J・S・バッハ「シンフォニア」二長調 BWV29より
高橋 聖子(パイプオルガン奏者)

◇「古典の日宣言」

野村 虹乃(第10回古典の日朗読コンテスト【中学・高校生部門】大賞受賞者)

◇主催者挨拶

古典の日推進よびかけ人代表 千 玄室(裏千家十五代 前家元) 古典の日推進委員会会長 村田 純一

◇来賓祝辞

衆議院議員 伊吹 文明 文化庁次長 中岡 司

◇合唱

「Doshisha College Song」「遥かな友に」「さくら さくら」「赤とんぼ」「梅雨の晴れ間」
同志社グリークラブ 115年の歴史を持つ同志社大学の男性合唱団が創り出す美しいハーモニーが会場に響きわたりました。日本の歌には、言葉の美しさ、言葉の深さ、日本人の誇り、日本人の心が込められています。やさしくそして力強く語りかけるかのような歌声に日本の原風景を思い出された方が多かったのではないでしょうか。

◇記念講演「古典と暮らす」

彬子女王殿下 この御講演で彬子女王殿下はさまざまな古典の入口をお示しくださいました。

◇ひとつ

古典作品をいきなり読むのはハードルが高いものです。その取っ掛かりとしてマンガから読んでみると、とてもわかり易くおもしろいということに気がつきます。古典の入口はさまざまなところにあります。マンガを古典の入口として入ってみてはいかがでしょうか。
御自身が学生の頃に御愛読された『あさきゆめみし』、歴史好きになられたきっかけとなった『学習まんが少年少女日本の歴史』等を例に挙げてお話しくださいました。

◇ひとつ

文化は人々の生活と共に変化し続けるものです。現代社会の中に取り入れ、活かしていかなければ日本文化は過去の遺物となってしまいます。それを防ぐために何が必要でしょうか。その一つの入口が、彬子女王殿下が取り組んでおられる「心游舎」の活動です。
日本の文化を担う子供達に生きた日本文化を体感・体験することのできるワークショップをかつて多くの人が集ったお寺や寺院で開催されています。
古典や日本文化は子供だから理解できない、難しいと勝手に大人が考えるのではなく、子供達は自分なりに難しいことを興味を持って楽しもうとすることを知ってください。まずは体験を通して、古典への入口をつくってあげましょう。
最後に、古典は日本人が生活の中で育んできたものと思えば古典が身近に感じられるのではないでしょうか、と結んでくださいました。

◇「語り芸の世界」

筑前琵琶「那須與市」田中旭泉 酒井旭粋 酒井自然(橘流日本橘会) 弓道部に所属する自然(じねん)くんは、「この矢を外させたもうな」と與市が神仏に祈る部分を自分の身に寄せて力強く語り後半は、旭泉さんと旭粋さんが、扇が夕日に照らされる色彩や、潮風、潮の香、箙(えびら)を叩く音、ふなばたを叩く音、称賛の声を迫真の語りで表現してくださいました。一調「高砂」金剛龍謹(能楽金剛流若宗家) 曽和鼓堂(能楽小鼔方)高砂は世阿弥によってつくられた能の代表的な祝言曲の一つです。松の木陰を掃き清める老夫婦は民の長寿を寿ぎ、夫婦の仲睦まじさは平安な世を表しています。鼓堂さんの鼓の音色は樹齢千年の松が寿ぐかのように清らで小気味好く、そこに長生のめでたさ、久しい繁栄の様子を美しい詞章で龍謹さんが豊かな声で謡上げてくださいました。浪曲「おさん茂兵衛」春野恵子(浪曲師) 一風亭初月(曲師)歌舞伎の坂田藤十郎が近松門左衛門に書き下ろしてもらったことでも有名な「おさん茂兵衛」の一部を聴いていただきました。浪曲には歌舞伎や講談、いろいろな演芸と共通する演目があり、聴き比べる楽しさをお話しくださった後は、「まってました!」。迫真の春野さんの浪曲をお楽しみいただきました。落語「掛取り」桂米團治(落語家)今年還暦を迎えられた桂米團治師匠。コンサートホールならではの演目「オペ落語」で会場内は笑いでいっぱい!師匠曰く「なんでオペ落語やらはるんですか?」って言われた時に必ずこう答えます。クラシックも落語もどちらも古典です。コーディネーター 木津川計(立命館大学名誉教授)若い人の間で日本語が揺れてるんです。日本語がやけていっている。若い人の間で日本語が消えていくんやないかという流れの中で、日本語の正確な読み、語りを保っていこうとしている古典の日の試みはたいへんすばらしいこと。朗読は標準語で語ります。標準語ばっかり一生懸命になってしまったら地域語が衰退していく。地域の文化は言葉と一体で、地域、地方の言葉が衰勢したら地域の文化も衰退させることになるんです。ですから私は関西の朗読家に呼びかけてきました。バイリンガルで語ろう!標準語で語る。その地域の言葉で語って、地域の言葉を守っていこうやないか。それが地域の文化を存在させていくことになる。どうぞ京都の皆さん、京都らしさ、京都の文化を維持していくためには京都弁を絶対失うてはいかんのです。京都の朗読家も京都弁で日本の文芸を読む。そして標準語でも読む。バイリンガルで地方の文化を守っていきたいということを本日の締めの言葉にさせていただきます。ありがとうございました。あらためて地域の言葉に耳を澄ましてみると美しいですね。旅に出て耳にする言葉に心がなごみ、ふっと笑顔になることがあります。私達を育ててくれた言葉を大切に、そしてこれからの世代に繋いでいきましょう。