古典の日
お知らせNotice
高校生から届いたお問い合わせ
『古典』は滅ぶのか!?
「古典の日お問い合わせフォーム」に、埼玉県の高校3年生の高橋叶恵さんから届きましたメールをご紹介したいと思います。
古典の日推進委員会の皆様
はじめまして。私は埼玉県在住、高校3年生の高橋と申します。
大学受験において、文化財と地域について勉強、研究をしています。
また、私は将来、文化財と地域を結ぶ架け橋のような存在になりたいと思っています。
文化財と地域について調べている中で、文化庁のホームページにあります、「文化遺産を地域活性化に係る活用した取り組みへの支援」のページで、「文化庁京都移転記念-「古典」普及啓発事業」の計画を拝見いたしました。
まず、全国数多くの団体が文化財と地域の関わりについて活動させていることに感動いたしました。そして、皆様の活動を拝見した時に、古典に親しみ、古典を日本の誇りとして後世に伝えていくために、古典の日を制定されたり、「古典の日フォーラム」を開催されたりという活動に大変感銘をうけました。
突然の依頼となり申し訳ございませんが、ぜひインタビューにお答えしていただけないでしょうか。
1.「文化庁京都移転記念-「古典」普及啓発事業」を計画されたきっかけ
2.古典文学を保護される思い
3.活動されていることに対して、人々の反響はどのようなものか
4.全国各地で危機に晒されている文化財に対する思い(危機に晒された、あるいは晒されようとしているご存知の文化財や、身近な文化財がそのような状態でございましたら、合わせてご記入をよろしくお願いいたします。)
5.これから古典文学を継承されることに対する思い
ご多忙の折恐れ入りますが、何卒よろしくお願いいたします。
高橋叶恵
当委員会からの回答をご紹介いたします。
●質問1
「文化庁京都移転記念-「古典」普及啓発事業」を計画されたきっかけ
●回答
古典文化の普及活用を目的とする「古典の日推進委員会」は、2008年の源氏物語千年紀を契機に京都府、京都市、宇治市、京都商工会議所によって設立されました。その後、2012年には議員立法によって「古典の日に関する法律」が制定され、11月1日が正式に国の定める記念日になりました。これを契機に、毎年、私たちの主催する「古典の日フォーラム」には、国の機関である文化庁から支援を受けてきました。
私たちの活動の目標は、「11月1日・古典の日」を全国の皆さんに知ってもらい、『源氏物語』はじめ、日本の優れた古典・伝統文化に誇りを持っていただくことです。しかし古典の日推進委員は京都という地方自治体を中心に構成された団体で、活動は京都中心であり、全国的に広げていくには限界があります。幾度か東京、大阪でもフォーラムなどを開きましたが、不十分でした。そこで、今回、文化庁が京都移転することを契機に、国の文化機関である文化庁とのより一層の協力関係を構築し、「古典の日」の理念が、より一層全国に広がることを願っています。
●質問2
古典文学を保護される思い
●回答
古典というと、誰もが学校での『源氏物語』や『枕草子』の受験教育で、文法教育から入った経験から、楽しくない、堅苦しい、難しいものというイメージがあります。「古典の日推進委員会」の古典の基本的な考え方は、2008年に源氏物語千年紀で宣言された「古典の日宣言」に記されています。故芳賀徹東大名誉教授を中心に執筆されたこの宣言の中で、古典とは「人類の叡智の結晶」であり「人間とは何か」という永遠の問いに立ち返させるものとされています。日本には、『源氏物語』『方丈記』以外にも日本人の精神的支柱を形作ってきた古典、優れた伝統文化(北海道のユーカラから沖縄の組踊まで地域の伝統芸能、祭礼等)が全国各地に存在します。古典は身近な楽しいものです。文学はじめ、古典を身近なものとしてとらえられるようにならなければなりません。
18世紀以来、西洋由来の現代科学文明が世界を覆い、全国の大学では古典文学を学ぶ学生が減り、地域では祭りに参画する若者が減り続けています。人が人としてあり続けるために、基礎となるリベラルアーツの中核である古典を学び、先祖から受け継いだ「知恵と誇り」を学ぶことが大事なのです。
●質問3
活動されていることに対して、人々の反響はどのようなものか
●回答
残念ながら若い世代の関心は今一息といえます。私たちの主催するフォーラムなどでも、集まるのは高齢者が多いのが残念です。
しかし、希望の光もあります。古典文学の朗読に特化した私たちの主催する「古典の日朗読コンテスト」では、中高校生部門に毎年全国から200名を超す応募者があり、今年13回を迎えて、参加者も技量も毎年向上しています。今年のテーマは日本の3大随筆『枕草子』『方丈記』『徒然草』で、既にたくさんの応募者が集まっています。
●質問4
全国各地で危機に晒されている文化財に対する思い(危機に晒された、あるいは晒されようとしているご存知の文化財や、身近な文化財がそのような状態でございましたら、合わせてご記入をよろしくお願いいたします。)
●回答
私たちは、地域の文化財、中でも無形文化財は、古典の大きな分野と考えていますので、その存続は私たちにも大きな関心事ですが、ひとことで言って、全国的に危機的状況にあると思います。現代文明の抱えた大きな問題ですから、総論的なことは控えますが、私たちに具体的に何ができるかを考えて、今年発足させたのが「古典の日文化基金賞」です。
この賞の創立にあたり、古典を三つのジャンルに分け、その中に「生活文化」の分野を置きました。地域の伝統的な祭礼、芸能、民謡、民芸などの伝統文化の保存、継承に頑張っている人たちを対象にしています。第1回の今年は、存亡の危機にあった沖縄の伝統芸能の保存普及に尽力してきた沖縄伝統組踊「子(しー)の会」を選びました。今年9月3日に表彰式を京都で行います。詳細はホームページをご覧下さい。
●質問5
これから古典文学を継承されることに対する思い
●回答
私たちが古典の日活動を続けてきた、また今後も進めていく上で、最も大切な思いは「古典の次世代への継承」です。上記、「古典の日文化基金賞」の設立趣意書にも記してありますが、全国にある古典を身近なものとし、それを次の世代、若者たちに継承すること、が「古典の日推進委員会」の使命です。古典は人が人であり、日本人が日本人であるためのレーゾンデートルです。日本の古典である『源氏物語』は、世界の古典です。私たちは1000年以上にわたって築きあげられた「人類の叡智の結晶」である古典を、今後共、日本人の誇りとして継承しなければなりません。
古典の日推進委員会ゼネラルプロデューサー
山本 壯太