「四季草花草虫図屏風」(蝶・蜻蛉)鈴木其一「春秋草木図屏風」

俵屋宗達「双犬図」※作品画像はすべて部分、細見美術館蔵

朗読コンテストRecitation

第16回「古典の日」朗読コンテスト(2024年)

 

古典の日推進委員会発足15周年
第16回古典の日朗読コンテスト公開最終審査会と表彰式が開催されました


 今年は古典の日推進委員会が発足して15周年でした。そして、古典の日朗読コンテストは第16回を迎えました。また、古典朗読に取り組む中学生・高校生を応援するクラウドファンディングにも挑戦し、皆様にご支援いただいたお陰で、目標を達成することができました。誠にありがとうございました。引き続き皆様のお力をお借りして、古典に触れ親しんでいただく一つとして、古典朗読のコンテストを続けたいと考えております。

 今年は、【一般部門】225名、【中学・高校生部門】266名 合計491名の応募がありました。中学生が学校で習う『枕草子』が課題に含まれていたためか、昨年に比べて中学生の応募くありました。詳細は、下記の表をご確認ください。

<応募状況詳細>

一般部門 中学・高校生部門 合計
中学生 高校生
『源氏物語』桐壺 66名 16名 28名 110名
『源氏物語』若菜 13名 8名 12名 33名
『源氏物語』浮舟 33名 9名 18名 60名
『枕草子』春はあけぼの・正月一日は 52名 83名 45名 180名
『枕草子』にくきもの 61名 24名 23名 108名
合計 225名 140名 126名 491名

 

■会場風景

 昨年に続き、金剛能楽堂での発表は、能舞台に立つことはなかなかないことなので、出場者は貴重な場になったことと思います。

 ※画像をクリックすると大きい画像が表示されます。

■主催者代表挨拶・来賓挨拶

主催者挨拶 古典の日推進委員会ゼネラルプロデューサー 野﨑貴典(以下要約)
 来年大阪で万博が開かれ世界中から来場者が見込まれます。そんな中、京都市では「万博と京都を結ぶ」に力を入れています。古典文学である『源氏物語』は、多くの言語で翻訳され世界からも関心を寄せられていますので、古典が「万博と京都を結ぶ」一助になればと考えています。
 平安時代に女性作家が生まれ、現代にも残る多くの作品が作られた背景には、日本独自の「ひらがな」の誕生が大きい。印刷のない時代から作品が残ったのは、書き写しそれを読み聞かせて繋がってきた。声に出すことで作者が込めた想いが自分に伝わり、そして相手にも伝わる。朗読のすばらしさをコンテストを通じて広めていきたい。そのコンテストに中学・高校生に参加してもらいやすいように、審査料無料継続のクラウドファンデングに今年挑戦をし、皆様のご支援のお陰で無事に目標額に達成することができました。これからも古典の日が全国に広がり、皆様に古典に親しんでいただけるよう活動を続けていきます。

来賓挨拶 文化庁 文化戦略官兼政策課長 横井理夫様(以下要約)
 一次・二次審査を通過し最終審査に臨まれる皆様、おめでとうございます。日頃からの努力に敬意を表し、これから向かえる本番に対して、存分に力を発揮されることを期待いたします。本日の課題は、いずれも平安時代に書かれ、現代まで読み繫がれてきた名作であり、思わず心を動かされる文学の持つ力を感じさせられる作品です。それらを声に出して読んでみると、心の動きや時の流れを一層楽しむことができると思います。出場者の朗読による、古典の美しい言葉と情景を改めて感じたいと思っています。


古典の日推進委員会ゼネラルプロデューサー
野﨑 貴典

文化庁 文化戦略官兼政策課長
横井 理夫

 

■最終審査会出場者の朗読

 課題テーマは「文学は時代を映す 躍動する平安の女性作家」です。大河ドラマ「光る君へ」で話題となっていますが、紫式部の『源氏物語』から「桐壺」「若菜」「浮舟」の3課題。清少納言の『枕草子』から「春はあけぼの・正月一日は」「にくきもの」の2課題の合計5課題でした。この中から1課題を選び、指定範囲を朗読して応募していただきました。一次・二次審査を通過された、合計14名(中学生3名・高校生3名・一般8名)が公開最終審査会に臨まれました。
※各写真の再生マークから、当日の朗読を聞くことができます。
※朗読順は、審査前に中学生・高校生・一般と別れてクジ引きをして決まりました。

<中学生>

平良 美和
(大阪府・桃山学院中学校3年生)
作品:『枕草子』にくきもの
坪井 仁香
(京都府・京都市立烏丸中学校3年生)
作品:『枕草子』春はあげぼの・正月一日は
佐々木 心春
(愛知県・南山中学校女子部3年生)
作品:『枕草子』にくきもの

<高校生>

長谷川 聖花
(静岡県・東海大学付属静岡翔洋高等学校3年生)
作品:『源氏物語』桐壺
滝沢 小夏
(福岡県・クラーク記念国際高等学校3年生)
作品:『枕草子』春はあげぼの・正月一日は
西牟田 悠里衣
(大阪府・浪速高等学校1年生)
作品:『枕草子』春はあげぼの・正月一日は

<一般>

立野 百合子(大阪府)
作品:『枕草子』にくきもの
田中 和美(兵庫県)
作品:『源氏物語』浮舟
岡﨑 節子(大阪府)
作品:『源氏物語』浮舟
坪田 千恵子(福井県)
作品:『源氏物語』桐壺
余田 順子(大阪府)
作品:『源氏物語』若菜
雀部 伸枝(兵庫県)
作品:『源氏物語』桐壺
西澤 美子(大阪府)
作品:『源氏物語』浮舟
東城 千鶴子(大阪府)
作品:『源氏物語』桐壺

 

■天台声明 ~京都大原で伝承 道長も聴いた調べ

 今年の審査中のお楽しみは、紫式部や藤原道長も聴聞したであろう声明でした。声明とは、仏教とともに伝わり、法要儀式の中で経文や真言に旋律抑揚を付けて唱える仏教声楽曲です。平安時代になると慈覚大師円仁が比叡山へ声明を伝えましたが、時代とともに分派し、大原寺では良忍が大原流を大成しました。天台声明は平安時代から約千二百年の間受け継がれ、現代でも多くの法要で唱えられています。

 まず、お一人の声だけがしばらく響き渡りました。音程が大きく上がったところから、多くの声が加わり能舞台の橋掛かりからお一人ずつ声明を唱えながら出て来られました。独特の抑揚の声が能楽堂いっぱいに広がり、会場は荘厳な雰囲気に包まれました。
 声明の最後は、天納住職より説明がありました。今回の声明は、天台声明の中でも密教の奉納で唱えられる声明で、実際の法要だと2時ほど唱えるところを、前半の3分の1をご紹介いただきました。声明の構成・旋律等の説明、また「呂律が回らない」と言う言葉は、今は言葉の意味が変わってしまっているが、元は声明や雅楽の「呂」と「律」と言う音楽用語からできた言葉だと言うことも、とてもわかりやすく説明してくださいました。
<声明出演者>
・實光院 住職 天納玄雄
・方廣寺 住職 木ノ下寂優
・吉祥院 住職 竹内淳照
・二尊院 副住職 羽生田光昭
・金剛寺 住職 奥村真浄

 

■出場者の中学・高校生にインタビュー

 審査中のお楽しみとして、出場者の中学生と高校生にインタビューコーナーを設けました。
 総合司会の星野さんがインタビューアーとして、出場者の中学生・高校生6名にコンテストの感想や課題を選んだ理由などを聞き出してもらいました。みんな元気に楽しく、時にはしっかりとした考えを発表してくれました。中学生・高校生の生の声が聞けて、とても楽しい時間となりました。

 

■審査発表・表彰式

 今年も審査委員を悩ませる甲乙付け難い審査となりましたが、無事に受賞者が決定しました。また昨年から設けた「みんなの感動賞」は、圧倒的な票数で決まりました。当日、コンテストの観覧に来て、「あたなも審査委員」にご参加していただいた皆様、今回の審査はいかがでしたでしょうか。大賞とダブル受賞となった余田さんは、「大賞受賞は思いがけないことで大変驚いた。そして、客席の皆様からの票は、とても嬉しく光栄です。」と話されていました。

大賞:【一般部門】
余田 順子(大阪府)
作品:『源氏物語』若菜
大賞:【中学・高校生部門】
長谷川 聖花
(静岡県・東海大学付属静岡翔洋高等学校3年生)
作品:『源氏物語』桐壺<
特別賞:文部科学大臣賞
雀部 伸枝(兵庫県)
作品:『源氏物語』桐壺
特別賞:京都府知事賞
坪田 千恵子(福井県)
作品:『源氏物語』桐壺
特別賞:京都市長賞
西澤 美子(大阪府)
作品:『源氏物語』浮舟
特別賞:宇治市長賞
岡﨑 節子(大阪府)
作品:『源氏物語』浮舟
特別賞:京都商工会議所会頭賞
田中 和美(兵庫県)
作品:『源氏物語』浮舟
特別賞:京都府高等学校文化連盟会長賞
西牟田 悠里衣
(大阪府・浪速高等学校1年生)
作品:『枕草子』春はあげぼの・正月一日は
特別賞:古典の日推進委員会中学生奨励賞
平良 美和
(大阪府・桃山学院中学校3年生)
作品:『枕草子』にくきもの
みんなの感動賞
余田 順子(大阪府)
作品:『源氏物語』若菜

 

■審査講評

 表彰式の後は、審査委員の先生方からの講評です。簡単にですが、講評を要約いたしました。

井上先生
 日常会話の話し方、お一人、お一人が持っている声の響き、今まで培ってきた言葉の風味を大切に語ってくださった方が、このステージに上がっていただける方ではないでしょうか。皆さん、本当に素晴らしいものをお持ちなので、声に自信がないと言うようなことは一切考えずに、自信を持ってください。日々のトレーニング、声を磨き、そして、次のステージでは、あなたがここで発表してください。

杉山先生
 昔に書かれたことを、現在の皆様に読み聞かせるのですが、言葉も違うし、内容もそのまま聞いてもわからないことも多いと思います。でも、聞くと何かが伝わる。それが大事ではないでしょうか。そして、そこには「この人の読みは心地良かったな。」と言うような相性があると思います。出場者の皆さん、高い技術をお持ちで優劣が付けにくかったですが、その何か相性見たいなものが、最後に順位になって表れたのではないでしょうか。

辻先生
 かな文字で書いた言葉を、朗読でどう活かすか。これがキーポイントではなかったでしょうか。でも、これが一番難しいことです。紫式部も清少納言も京女です。京女のたおやかさ、上品さ、優雅さ。京女が書いたと言う文字を上手く自分の中に入れて、朗読に活かすと良い朗読ができるのではと考えました。

林先生
 活字で止まらない。活字の紙の向こう側へ。これが書かれたその地点へ。そこへ近づいて行きたい。そして、その近づいて見えてきた風景を、いかに自分の身体を使って鳴らすか。声は身体が出す音で、身体は楽器です。自分の身体を楽器として、ゆるやかに、豊かに、今を生きている力でどう鳴らすかで、聞いている方の心に届くものが生まれてくると思います。

中村先生
 セリフをどう読むのか。セリフをどの程度やったら良いのか悩む方は多いと思います。セリフの頃合いと言うのを考えてください。それには、ご自身で朗読を録音して聞いてください。そうすると、自分の下手さがわかり自信を失います。でも、そこから始めてください。また、同じ趣味を持つ朗読の会に入って、仲間と一緒にやってください。同じ趣味を持つ仲間を持つことは、素晴らしいことです。そして、来年、挑戦してください。来年、ここでお会いしましょう。

 中村先生は、レコーダーに吹き込まれた朗読を参考にして、技術的なアドバイスをしてくださいました。毎回、とても貴重な審査委員の先生方からの講評は、会場でしか聞くことができません。是非、直接聞きに会場に来てください。

審査委員 井上 恭子 審査委員 杉山 準
審査委員 辻 ひろ子 審査委員 林 英世
審査委員長 中村 宏

 

■最終審査会出場者 集合写真

 

■総合司会

司会者 星野 祐美子

 

 コンテストに何度もご応募いただいている方。今年は最終審査に残らなくても来年はわかりません。最終審査会に残られた方が、次の年は一次審査までの事もありますし、一次審査までだった方が最終審査まで残られることもあります。毎年のルーチンとして、来年も是非挑戦をしてください。また、この報告を読んで初めて応募をお考えの方も、是非挑戦をしてください。応募された皆様に、審査講評を返却しておりますので、今後の朗読の参考になると思います。
 来年の課題発表は、4月下旬予定です。次回も沢山の皆様からのご応募を、お待ちしております。

フォーラム「古典の世界を読む2024」のご案内(PDF形式)

 

-◆◇-◆◇-◆◇大賞受賞者の喜びの声◆◇-◆◇-◆◇-

 大賞受賞者のお二人に、古典の日朗読コンテストに向けて取り組まれたことや、想い、苦労されたこと、工夫されたこと、コンテストに参加された感想等をご寄稿いただきました。既にコンテストに挑戦いただいている方や、これから初挑戦される方の励みになればと思います。

-◆◇大賞【中学・高校生部門】◇◆-
「紫式部の世界を伝えるために」 東海大学付属静岡翔洋高等学校3年 長谷川 聖花

 今回は「源氏物語 桐壺」を読ませていただきました。練習中はなかなか納得のいく朗読が出来ず苦労しました。
 当日は、勝つことよりも大会を楽しむことを目標にしていました。自信を持って作品を伝えたい!という気持ちで朗読することが出来たので良かったです。同年代の出場者とも沢山色んなことを話せましたし、一般の部の方の朗読を直に聞くことが出来たことは貴重な経験でした。
 高校生活最後の大会で大賞を受賞できたこと、本当に嬉しかったです。

 

-◆◇大賞【一般部門】◇◆-
「古典に魅せられて」 余田 順子

 毎年、審査の批評が楽しみでした。厳しいコメントに落ち込むのですが、また、自分のダメなことを教えていただけることが励みになりました。
 2020年に思いがけなく京都府知事賞をいただいたのですが、コロナ禍中で音声のみの受賞でした。
 いつか憧れの舞台に立ちたいと思っていたら、この度、望みが叶い登壇ということになり、それから一ケ月必死で読み込みました。
 来年から参加できないのは寂しいのですが、古典はずっと読んでいこうと思っています。

 

第16回古典の日朗読コンテスト 課題作品・審査委員


■課題作品
【一般部門】【中学・高校生部門】共通 ①~⑤のいずれか1作品を選択
『新編日本古典文学全集(小学館刊)』の以下の指定範囲を朗読のこと

①『源氏物語』 桐壺(新編日本古典文学全集20)
 範囲:藤壺(ふぢつぼ)と聞こゆ。~かかやく日の宮と聞こゆ。(P.42 L.15~P.44 L.12)

②『源氏物語』 若菜(新編日本古典文学全集23)
 範囲:まづは、思ふ人にさまざま後(おく)れ、~よろづに聞こえ紛らはしたまふ。(P.206 L.9~P.208 L.9))

③『源氏物語』 浮舟(新編日本古典文学全集25)
 範囲:君は、げに、ただ今、~またえ思ひたつまじきわざなりけり。(P.184 L.8~P.186 L.7)

④『枕草子』 春はあけぼの・正月一日は(新編日本古典文学全集18)※両範囲を朗読
 範囲:春はあけぼの。~白き灰(はひ)がちになりてわろし。(P.25 L.2~P.26 L.5)
 範囲:正月一日(ついたち)は、~引き入られてよくも見えず。(P.26 L.10~P.28 L.2)

⑤『枕草子』 にくきもの(新編日本古典文学全集18)
 範囲:にくきもの いそぐ事あるをりに来て、~こと人にも語りしらぶるもいとにくし。(P.64 L.6~P.66 L.11)

■審査委員
審査委員長 中村 宏   (元NHKアナウンサー・「NHKラジオ深夜便」第2金曜日を担当)
審 査 員 井上 恭子  (元日本海テレビアナウンサー・朗読、話し方講座講師)
      杉山 準   (演劇プロデューサー・特定非営利活動法人劇研理事長)
      辻  ひろ子 (元KBS京都アナウンサー・朗読講座講師))
      林  英世  (俳優・大阪芸術大学舞台芸術学科非常勤講師・劇団ひまわり俳優養成所講師)
      星野 祐美子 (フリーアナウンサー)

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