朗読コンテストRecitation
第15回「古典の日」朗読コンテスト(2023年)
古典の日宣言15周年記念
第15回古典の日朗読コンテスト公開最終審査会と表彰式が開催されました
晴れ間は見えるものの、時折小雨の降る寒い日となった11月25日の土曜日に、第15回古典の日朗読コンテスト最終審査会と表彰式を開催いたしました。
2008年11月1日の源氏物語千年紀記念式典で、『源氏物語』をはじめとする古典を日本の誇りとして後世に伝えることを改めて決意し、古典に親しむ日として「古典の日」宣言をして15年が経ちました。そんな記念の今回の朗読コンテストに、【一般部門】236名、【中学・高校生部門】230名 合計466名の応募があり、一次・二次のテープ審査を通過した15名(中学生3名・高校生3名・一般9名)が、公開最終審査会に臨まれました。
<応募状況詳細>
一般部門 | 中学・高校生部門 | 合計 | ||
---|---|---|---|---|
中学生 | 高校生 | |||
土佐日記 | 53名 | 35名 | 48名 | 136名 |
蜻蛉日記 | 71名 | 31名 | 30名 | 132名 |
紫式部日記 | 17名 | 12名 | 13名 | 42名 |
更級日記 | 95名 | 29名 | 32名 | 156名 |
合計 | 236名 | 107名 | 123名 | 466名 |
■会場風景
会場は、2年ぶりとなる金剛能楽堂でした。能舞台に立てる貴重な経験は、出場者の良い記念になったことと思います。また、能舞台での朗読は、とても雰囲気が良いと観客の皆様からも好評の会場です。
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■主催者代表挨拶・来賓挨拶
古典の日推進委員会ゼネラルプロデューサー 野﨑貴典は挨拶の中で、古典の日宣言から15年、多彩な文化事業を行ってきた中の朗読コンテストに、現在まで6千人もの応募者があり古典朗読の技が競われてきた。声に出して読むことで作者が文に託した想いが心に流れ込むように入ってくる。古典にはそんな力がある。このコンテストを通して、声に出して読む大切さが伝わればと述べました。
来賓のご挨拶は、文化庁 政策課長 篠田智志様からいただきました。地方創生の一環として京都に文化庁が移転し、これを契機に古典の日の全国展開を推進していきたい。古典作品は黙読においても、当時生きた人々の様子・情景を知ることが出来るが、声に出して読むと不思議なほどに、その時代に生きた人々の心の動きや時の流れをシンクロするように感じる。本日の出場の皆様の朗読により、古典のうつくしい言葉と心地よいリズムを改めて感じたいと述べられました。
古典の日推進委員会ゼネラルプロデューサー 野﨑 貴典 |
文化庁 政策課長 篠田 智志 |
■最終審査会出場者の朗読
今年の課題テーマは「かなで綴られた日記文学」です。宮中の女性たちが「ひらがな」に注目し、日記や和歌に使い始めました。その中で発展したのが日記文学です。応募時に『土佐日記』『蜻蛉日記』『紫式部日記』『更級日記』の4課題から1課題を選び、指定範囲を朗読していただきます。出場する15名は、応募総数466名の中から一次・二次審査を通過されてきており、この舞台に立てるだけで、すばらしい実力をお持ちの皆様です。当日の、皆様の朗読をお聞きください。
※朗読順は、午前中に中学生・高校生・一般と別れてクジ引きをして決まります。
<中学生>
川上 来夏 (京都府・京都市立西京高等学校附属中学校3年生) 作品:『更級日記』 |
中道 早紀 (京都府・京都市立西京高等学校附属中学校3年生) 作品:『蜻蛉日記』 |
亀井 優奈 (大阪府・桃山学院中学校3年生) 作品:『更級日記』 |
<高校生>
恩田 采奈 (神奈川県・青山学院横浜英和高等学校1年生) 作品:『土佐日記』 |
西川 怜那 (静岡県・東海大学付属静岡翔洋高等学校1年生) 作品:『更級日記』 |
長谷川 聖花 (静岡県・東海大学付属静岡翔洋高等学校2年生) 作品:『紫式部日記』 |
<一般>
駒木 玲子(奈良県) 作品:『更級日記』 |
岡田 美都代(京都府) 作品:『蜻蛉日記』 |
善積 まゆみ(神奈川県) 作品:『蜻蛉日記』 |
西澤 美子(大阪府) 作品:『更級日記』 |
中村 洋子(東京都) 作品:『土佐日記』 |
安田 惠江(宮崎県) 作品:『紫式部日記』 |
木村 直子(大阪府) 作品:『蜻蛉日記』 |
橿尾 志津子(福井県) 作品:『蜻蛉日記』 |
田岡 たか子(神奈川県) 作品:『蜻蛉日記』 |
■アラブ音楽演奏 -今なお歌い継がれる悠久の旋律
審査をしている間のお楽しみは、アラブ音楽演奏でした。なかなか馴染みのない方が多い音楽ジャンルとは思いますが、ちょうど主人公がベリーダンスをしているテレビドラマが放送中で、その中でアラブ音楽が流れています。今回演奏をしていただいた楽器、ダルブッカと言う中東の太鼓もテレビで出てきているので、皆様から「知っている。」「見た事ある。」と言った反応もされていました。
アラブ音楽の古典曲からオリジナル曲の演奏の間に、楽器の説明やアラブ音楽のリズムについても楽しく話していただき、皆様とても興味深く聞かれていました。
能楽堂が、異国の雰囲気に包まれたひとときでした。
アラブヴァイオリン奏者 秦 進一 |
ウード奏者・作曲家 加藤 吉樹 |
ダルブッカ・パーカッション奏者・作曲家 森内 清隆 |
■審査発表・表彰式
今年は審査発表で、2つの初めての事がありました。1つは、特別賞の文部科学大臣賞と京都府高等学校文化連盟会長賞のダブル受賞者が出たことです。京都府高等学校文化連盟会長賞は【中学・高校生部門】の高校生より1名選出され、【中学・高校生部門】部門の大賞受賞者と京都府高等学校文化連盟会長賞受賞者は、全国高校生伝統文化フェスティバル-伝統芸能選抜公演(12月17日京都コンサートホールで開催)-に出場し朗読を発表します。審査は様々な観点から話し合われ、その結果、東海大学付属静岡翔洋高等学校2年生の長谷川さんが、ダブル受賞となりました。
もう1つは、今年から本選とは別に客席の皆様に投票をしていただき決まる「みんなの感動賞」を設けました。第1回の客席の皆様の感動をよんだのは、京都府知事賞を受賞された橿尾さんが、ダブル受賞をされました。なんと【中学・高校生部門】大賞受賞者の、東海大学付属静岡翔洋高等学校1年生の西川さんとは僅か1票差!最終審査会出場者レベルになると、皆様の技量はすばらしく、後は投票される皆様の朗読の好みとなってくるのでしょうか。この「みんなの感動賞」の投票は、来年も行う予定ですので、是非、コンテストに足を運んでいただき、自分のお好みの朗読に1票を投じてください。
■審査講評
表彰式の後は、審査を勤められた審査委員の先生方からの講評です。簡単にですが、講評を要約いたしました。
中村先生 : 自分の朗読を録音して聴くことをお薦めします。自分が思った以上に、間を取った場所が取れていなかったり、感情が入っていなかったりする。そこで、2.5倍の感情を入れて読んでみてほしい。録音を聴いて改善をしてほしい。是非、朗読を好きになってください。
井上先生 : 古典は声の言葉の基本だと思います。最終審査に残っている方は、作者が作った作品を自分の声の言葉の風味・スパイスを加えて、作品を自分の物にされてこのステージに立っている。自分の声の表情や風味を大切に、これからも古典を学んでください。
辻先生 : 舞台の上では、お客様に自分の気持が届く読みをしないといけない。そうすると、不思議なことに、お客様の気持がこちらに届いてくる。お客様が読ませてくれる、という言う気分になることがある。そうなれば上手な読みになるのではないでしょうか。
端田先生 : 一般部門の出場者は、顔馴染みの方が多い。作品をしっかり理解をして、イメージを持って皆さんの前で自分の想いを遂げてください。来年も頑張ってください。
菊川先生 : 皆さんの努力・活力に刺激されて審査が出来た。我々の力も、参加してくださった皆様が上げてくださったように思います。古典を好きになって、声に出して読んでください。
毎回、とても貴重な審査委員の先生方からの講評は、朗読を続けられれるヒントが沢山得られると思います。また、出場者の朗読も勉強になると思いますので、是非、直接聴きに会場に来てください。
また、今回で長年に亘り審査委員を勤めていただきました、菊川先生と端田先生がご勇退されます。最後に感謝の気持ちを込めて花束の贈呈を行いました。
審査委員 中村 宏 | 審査委員 井上 恭子 | 審査委員 辻 ひろ子 |
審査委員 端田 宏三 | 審査委員長 菊川 德之助 |
■最終審査会出場者 集合写真
■総合司会
来年のNHK大河ドラマは、源氏物語の作者 紫式部を描いた「光る君へ」です。古典文学が注目される年になると思います。コンテストの課題も、どの作品になるかお楽しみにお待ちください。
来年も沢山の皆様からのご応募を、お待ちしております。
フォーラム「古典の世界を読む2023」のご案内(PDF形式)
第15回古典の日朗読コンテスト 課題作品・審査委員
■課題作品
【一般部門】【中学・高校生部門】共通 ①~④のいずれか1作品を選択。
『新編日本古典文学全集(小学館刊)』の以下の指定範囲を朗読のこと
①『土佐日記』(新編日本古典文学全集13)※両範囲を朗読
範囲:男もすなる日記(にき)といふものを、~ののしるうちに夜更(よふ)けぬ。(P.15 L.1~P.15 L.10)
範囲:二十七日。大津(おほつ)より浦戸(うらど)を指して漕(こ)ぎ出(い)づ。~船に乗りなむとす。(P.18 L.1~P.19 L.11)
②『蜻蛉日記』(新編日本古典文学全集13)※両範囲を朗読
範囲:かくありし時過ぎて、~さてもありぬべきことなむ多かりける。(P.89 L.1~P.89 L.10)
範囲:さて、九月(ながつき)ばかりになりて、~わびしかりけり」(P.99 L.12~P.101 L.5)
③『紫式部日記』(新編日本古典文学全集26)※両範囲を朗読
範囲:御五十日(おほんいか)は霜月(しもつき)の朔日(ついたち)の日。~くはしうは見はべらず。(P.162 L.1~P.162 L.14)
範囲:そのつぎの間の、~殿のたまはす。(P.164 L.11~P.165 L.10)
④『更級日記』(新編日本古典文学全集26)※両範囲を朗読
範囲:あづま路(ぢ)の道のはてよりも、~いまたちといふ所にうつる。(P.279 L.2~P.280 L.1)
範囲:かくのみ思ひくんじたるを、~后(きさき)の位も何にかはせむ。(P.297 L.8~P.298 L.11)
■審査委員
審査委員長 菊川 德之助 (演出家・元近畿大学舞台芸術教授)
審査委員 端田 宏三 (大阪放送劇団俳優・関西朗読家クラブ代表)
中村 宏 (元NHKアナウンサー・「NHKラジオ深夜便」第2金曜日を担当)
井上 恭子 (元日本海テレビアナウンサー・朗読、話し方講座講師)
辻 ひろ子 (元KBS京都アナウンサー・朗読講座講師)
星野 祐美子 (フリーアナウンサー)